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「大企業病」の原因、症状、対処法。社内の評価は無視して外を向け。

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大企業病とは

大企業病は、会社だけでなく日本経済を失速させる社会全体の大問題だ。
大企業病とは、①自分の頭で考えずルールに固執する手続き主義、②リスクをとる判断から逃げてしまう事なかれ主義(自分で決裁できるにも関わらず上司にお伺い)、③縦割り意識やセクショナリズムの跋扈、④世間の常識よりも社内の非常識が正論化、⑤実力やスキルを無視した年功序列や派閥に基づく昇進、等が挙げられる。

大企業病も末期になってくると、こういった状態に対して全く危機意識や自覚症状がなく、治療する気がない。仮に、自覚症状があったとしても、改善しようとしない。なぜなら、現状を維持する方が、自分自身にとって簡単に報酬(給与や昇進等)が手に入るからである。

大企業病の原因

大企業病の全ての原因は、「ルール」に存在する。
組織に所属する人間全てが、自分の頭で考え、自分で判断し、報告や相談も適切で、イレギュラーへの対応も問題無ければ、ルールを作る必要はない。例えば友人と2人で始めたベンチャー企業はマニュアルを作る必要はない。
しかし、人数が増えてくると、トップの思い通りに経営や事業が進まなくなってくる。無能な人間が組織に入り込んでくるからだ。無能な人間は、指示待ち人間で、何も考えず、報告も無く、失敗を隠す。

こういった人間が、少しでも良く動くために必要なのが「ルール」だ。
仕事はこのように進めなさい、こういった場合は上司へ報告しなさい、悪い情報こそ早く報告しなさい。
このようなルールは、無能な人間を前進させるために有効ではあるが、その分管理者のマネジメントも楽にさせてしまう(思考停止させてしまう)というデメリットもある。これが大企業病を発祥させる根本的な原因なのだ。

ルールは企業にとって憲法である訳なので、全ての人間は「ルールへの適合性」の観点でのみ物事を整理する。
本来であれば、ルールを無視して本質的な議論を行うべきであり、本質的な答えに対してルールがアンマッチであればルールを柔軟に変更すべきなのだ。
しかし、無能な人ほど、ルールに強く固執する。このルールを盾にして、部下からの意見を拒絶する。自分の言う事を聞く素直な部下ばかりを従えて、派閥が大きくなる。本質的な議論を無視してでもルールを厳格に守る管理者は、昇進を果たす。なぜなら、その管理者の上司も無能であるからだ。

この状態が蔓延してくると、いよいよ優秀な人たちが取るべき行動は限られてくる。
会社を辞めるか、昇進や評価を諦めるか、無能な人に従う素振りをして上手に立ち回るか、のいずれかだ。
会社にとって一番たちの悪いのが、一番最後に挙げた「無能な人に従う素振りをして上手に立ち回る」優秀な人間だ。
この優秀な人間は、ルールをさらに巧妙に変更していく。ほんの少しだけ判断の余地を残すようなルールを設定する。しかも、本当に無能な人には判断できないよう絶妙な仕掛けをする。そうすることで、自分の好きな方向に事を運ぶことができるからだ。

こうなると、もうどうしようもない。官僚や名だたる大企業のほとんどは、ほとんどこの状態だろう。

大企業病の末期症状

大企業病が末期になると、その組織はユーザ思考ではなくなる
大企業病を煩った組織は、ユーザではなく「社内」や「上司」ばかり気にする。ユーザに喜ばれることではなく、社内で評価される仕事をする。注意すべきなのは、既に社内には無能な社員しかいない状態であることだ。
無能な社員は、当然にユーザのことなんて考えていないため、真に付加価値のあるプロダクトを創造する考えは持ち合わせていない。

具体的な例を出せば、iPhoneに駆逐されたフィーチャーホン(ガラケー)を作り続けた、日本の携帯電話メーカーだ。意味のない高性能化、多機能化という全く頭を使わなくても良いプロダクトばかりを「新商品」と称して作り続けた。写真の画素数は上がるが、ユーザはとっくにその違いに気付いていない。あれも、これもと機能を付加するが、ユーザの求めていない機能ばかりが追加されている。
社内ばかり気にしているために、市場の変化に全く気が付かないのだ。

ユーザ思考の大切さについては過去にも記事を書いているので、以下の記事をご一読頂きたい。

www.overwrite-save.com

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大企業病に所属するトップの役割と実態

ルールありきの組織になると、大きく夢を語ることのできる人間がいない。
各事業部のトップは、ルール通りに早く仕事をこなすオペレータがその役職に就く。良くて現場監督レベルだ。要するに、現場感覚だけで上に立ってしまう。
本来であれば現場感覚とは離れて、ユーザ思考で夢や未来を語る人、つまりプロデューサー感覚のある人がトップに立つべきだ。

次にマネジメント能力の視点で観察すると、ルールとそれに従うオペレーションを重視する。そのため、「同じことを同じように続ける」ということに意義を見出すようになる。
「マネジメント=作業を管理すること」になってしまう。社内調整に重きを置くため、意思決定前に色んな人の意見を聞き、それを何とか取り入れようとするため、中途半端なプロダクトしかできない。何度も取り上げてしまうが、多機能化したガラケーが、その際たる例だろう。
こういった人に、新規事業や抜本的改革を求めると中途半端にお茶を濁した結論を導くことしかできない。

志向という点では、ほとんどの場合がレイトマジョリティだ。意思決定のタイミングが極めて低く、「他社の様子を見てから」「市場の反応を見てから」でないと判断できない。何かを提案するにしても、「他社動向」ばかりで物事を語ってしまい、ユーザ嗜好や要求をベースに語られることはない。誰よりも早く決断し、社会に影響を与えていこうという発想そのものが生まれてこない。
そのため、大企業病に陥った企業にはイノベーターは存在しない。

残念ながら、視野も狭く大局観がない。代替、個別の案件を個別に判断していく。計画を立てるような局面でも、個別の小さな施策を積み上げる形式を好む。
全体感、大局観で大きな方向性を示し、そのために必要なこと、すべきことは何かという本質的な議論を嫌う。その割に、議論に負けることを嫌うプライドだけはあるので、小さく狭い個別議論に持ち込み、正当化の議論ばかり続ける。

大企業病への対処法

こういった状態を変化させる対処法は、2点しかない。
一つ目は、トップダウンによる改革だ。こういった状態に危機感を覚えた社長が、トップダウンで組織を改革していくことだ。
無能な社員は重役から外し、無駄なルールはトップダウン式で廃止や変更に導く。派閥や社内の調和を無視した「真の最適化」を構築していく。

二つ目は、ダイバーシティの促進だ。
外国人や、経験豊富な若者を大量に採用していき、管理職ポストに就ける。多様な価値観を歓迎し、多様性こそ付加価値を創造する源泉である、という文化を築いていく。無能な社員は、凝り固まった狭い価値観を共有することでしか自分の存在価値を示すことができないため、多様性を認める文化では生きていけない。

先に挙げたトップダウンの改革でもそうであるように、結局組織は「人」次第で良くも悪くも変わる。
「人」が変わらなければ、何も変わらない。
ということは、残念ながらあなたが組織のトップでもない限り、大企業病が治療されるのはかなり望みが薄いということだ。

大企業病の企業に所属する人がすべき対処法

大企業病を煩った会社に所属している、ということに気付いただけでも治療の余地がある。
しかし、その会社で勤め続けていると、あなたの実力は正当に評価されることはない。
必ず意識すべきことがある。「○○会社のあなた」ではなく、「あなたがたまたま○○会社で仕事をしている」というだけなのだ。
社会の常識は、大企業病の会社では非常識だ。そんな会社のブランドなんかを、自分のブランドとして使うことを恥じるべきだ。
あなたが注目すべきことは、社内の評価ではなく、社会からの評価だ。
ユーザを無視した生産性の無い仕事を繰り返すことは、社会的に何の価値もない。
社会から必要とされる人材になるよう、本を読み、勉強し、外との人脈を拡げよう。いつでも会社を辞める準備をしておこう。


大企業病の恐ろしさについて見事に表現された書籍。

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