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なぜ、コンテンツが同じでも人気に差があるのか【ペルソナ分析を捨ててJTBD理論で改善】

風力発電と道路

コンテンツがほとんど同じであるにも関わらず、人気に圧倒的な差が開くことがある。

道理で考えれば、コンテンツの品質が同じであれば、結果的に同じ程度の人気が出るはずなのだが、実際にはそうなっていないことがほとんどだ。
例えばブログ一つとっても同じことが言える。
何となく同じようなことを書いていても、人気のあるブログとそうでないブログが存在する。

このような場合、「JTBD(Jobs To Be Done)理論」で考えると解決する場合がある。
今日は、JTBD理論の概要と効果、解決方法について紹介するので、コンテンツ作りに行き詰った時の参考になれば嬉しい。

JTBD理論とは

まず最初に、一つのエピソードを紹介したい。

あるファストフード企業がミルクシェイクの売上を改善したいと思った。
ミルクシェイクの購入者属性を整理し、同一の属性を持つ人を対象に、重めがいいか軽めがいいか、フルーツ味かチョコレート味か、など、どんなミルクシェイクが理想的か尋ねた。調査はうまく進み、特定したターゲットの好みをもとに製品を改善したが、売上は全く改善しなかった。

そこで別のチームが再び調査を行った。調査チームは店舗で来客を一日中観察した。すると早朝にミルクシェイクを買う客が多いことに気がついた。早朝の購入者になぜミルクシェイクを買ったかを尋ねると、
・長い車通勤の間に片手で手間なく飲める
・一気に飲めないので暇つぶしになる
・腹持ちが良い
といった理由だとわかった。

この調査結果をもとに製品開発を再度行ったところ売上を改善することができた。


このエピソードで大切なのは、改善内容そのものではない。
今までの典型的なマーケティング方法だと、「どんな(What)ミルクシェイクが売れるか」という分析をしがちだ。購買層を調べて、味やサイズに関するアンケートを取り、ひたすらミルクシェイク自体の原因を探る。このエピソードでも、まさにミルクシェイクそのものに焦点を当てて改善を重ねている。
しかし、別のチームが「なぜ(Why)ミルクシェイクを買うのか」という、ミルクシェイクそのものではなく、ミルクシェイクを買った「理由や動機」に焦点を当てたことで、決定的な改善に繋がっている。

このエピソードは、「イノベーションへの解(著:クレイトン・クリステンセン)」という書籍で紹介されているものだ。

イノベーションへの解 利益ある成長に向けて (Harvard business school press)

イノベーションへの解 利益ある成長に向けて (Harvard business school press)

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クリステンセンは、「購入する理由、動機」を「Jobs To Be Done」(片付けるべき仕事)、「購入する行為」を「Hire」(雇う)と表現している。
ミルクシェイクのエピソードで言えば、「片手で飲みたい」「暇を潰したい」「腹持ちを持たせたい」というのがユーザの「Jobs To Be Done」(片付けるべき仕事)であり、それらを片付けるために「ミルクシェイク」を「Hire」(雇う)したという訳だ。

ペルソナ分析を捨ててJTBD理論を試してみる

以前このブログで、「予めユーザ像(ペルソナ)を設定すること」という記事を書いているが、ペルソナを設定してシミュレーションし、結果から改善につなげる、というサイクルは時間がかかるというデメリットもある。
しかも、ペルソナが複数にわたる場合、ユーザが何を期待しているのかが多岐に亘ってしまい捕らえにくくなることもある。
(どれだけペルソナを精緻に設定したところで、ユーザのゴールや目的を見誤ると、意味をなさない)

それに比べてJTBD理論で考えると、どんなペルソナのユーザであっても「片付けたい仕事」を想定すれば良く、より簡単かつ明確にゴールを設定するのに役立つことが多い。

実際に自分自身のことを振り返ってみれば、JTBD理論のことはよく理解できる。
僕たちは日常で様々な「モノ」「サービス」を購入している訳だが、僕たちはその「モノ」や「サービス」そのものが欲しい訳ではなく、「モノ」や「サービス」によって何かを達成したいから買うのである。

暇を潰したいから「テレビ」を買い、コミュニケーションを取りたいから「スマホ」を買い、興奮したいから「ディズニーランド」へ行き、リラックスしたいから「旅行」へ行く。

逆を返せば、暇を潰したければ「パズル」でも良いし、コミュニケーションを取りたければ「手紙」でも良いし、興奮したければ「バンジージャンプ」でも良いし、リラックスしたければ「温泉」で良い。

言うまでもないが、「モノ」や「サービス」を買っている人たちが、本当に達成したいと思っていることを徹底的に探ることが、何よりも重要なのだ。
JTBDを検討する上で一番効果的なのは、実際のユーザへヒアリングし、「それを買って、何を達成したかったか」を聞き出すことだろう。
ペルソナ分析も効果的であるし重要であるが、JTBDを無視してしまっては本末転倒になってしまう危険もあるので気をつけたい。

JTBD理論の目的

クリステンセンは、JTBD理論の分析によって達成される目的は、次の3つだと言っている。

1つめは、改良の正しい方向性の発見。
2つめは、真の競争相手の認識。
3つめは、新市場と商品の開拓。

その1:改良の正しい方向性の発見

冒頭に「ミルクシェイク」のエピソードを紹介しているが、ユーザは「味」を求めている訳ではないので、いくら「味」を改良しても意味がない。「片手で飲みたい」「暇を潰したい」「腹持ちを持たせたい」というJTBDを解消する方法を改善しなければ、売り上げにはほとんど影響しないである。
つまり最初は、「味」「サイズ」を変える等、ひたすら意味の無い改良を重ねていたことになるが、最終的にユーザの解決したいこと、まさに正しい改良の方向性を発見したと言える。

その2:真の競争相手の認識

あなたが冷蔵庫を買う目的は、「いつでも冷たいものを口にするため」「食品の鮮度を保つため」といったところだろう。
もしあなたが、冷蔵庫メーカーに勤めているとしよう。競争相手は、パナソニックであり、象印であり、LGと設定するのが普通の考え方だ。

しかしここで、小売のアマゾンが「注文から10分以内に、生鮮食品を冷たい状態で届けます」というサービスを開始したらどうだろうか。
ユーザの一定数(特に出張の多い独身者等)は、冷蔵庫を必要としなくなるのではないだろうか。
こうなってくると、冷蔵庫メーカーの競争相手は「アマゾン」になってくる。

単に冷蔵庫の性能競争に陥っているメーカーは危ない。
ユーザは冷蔵庫によって何を達成したいのか、考える必要があるのだ。

その3:新市場と商品の開拓

今までに散々説明してきた通り、ユーザが求めているのは「モノ」や「サービス」そのものではなく、それらによって「仕事を片付ける」ことを求めている。
「ミルクシェイク」も「冷蔵庫」も、単なる手段に過ぎず、ユーザの「仕事」を片付ける手段であれば何でも良いのだ。
先に述べた「10分以内に生鮮食品を自宅に届けるサービス」は、(実現の可能性は無視しているが)既に飽和状態と見られる冷蔵庫市場に対して、新しい市場と商品を開拓したと言える。

まとめ

JTBD理論というと、なんだか小難しい理論に聞こえる。
しかし、言っていることは至極単純なことである。

一方的に自分たちの商品やサービスを売りつける事例は、そこらじゅうで目にする。
いつも例に出すが、かつて日本企業が競いに競っていたガラケーが典型的な例である。
・世界最薄、最軽量
・カメラ●万画素
・フェリカ搭載

これらは機能の説明であるだけで、一体これらによってユーザは「何が解決できるか」「何を体験できるか」全く分からない。そこまで踏み込めていないのだ。
これは、メーカーが高機能・多機能競争に陥ってしまい、ユーザが解決したい仕事を無視したことが原因だ。

あなたのコンテンツは、ユーザのどのような仕事を解決するか明確だろうか。
効果に伸び悩んでいるのであれば、一度「JTBD理論」で自分のコンテンツを見直してみてはいかがだろうか。


クレイトン教授は、他にもいくつかイノベーションに関する書籍を執筆しているので、時間があれば一読してみるといい。(いくつか内容の重複はあるが、新しい気付きがあるだろう)

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

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