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ザッカーバーグ、オバマ前大統領・・・ビジネスリーダーもこぞって読んだ必読の歴史書【サピエンス全史(著:ユヴァル・ノア・ハラリ)】

良書と巡り合うのは、とても難しい。

毎日、多くの書籍が発刊され、全てに目を通すことは到底できない。その中で、いかに良書に出会うかというと、出来るだけ信頼できる人からお勧めされた書籍を読むことだ。インターネット上にも書評やレビューが溢れているが、インターネットやリアルに関わらず「この人の書評は信頼できる」という特定の人を数人見つけておくと良いだろう。
僕自身、そういったお勧め書籍の中から本を選び、月に3~4冊程度本を読んでいる。本のジャンルも小説からアカデミックなものまで様々だ。

このブログでも、本を読む機会があまり無い方や、なかなか良書に出会えていない方に向けて、僕が実際に読んだ本の中から「良書」だと感じた本について、定期的に紹介していきたい。
今日は、ここ数ヶ月で読んだ本の中から、僕自身のとても大きな学びとなった1冊の良書「サピエンス全史」について紹介したい。

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

総評

サピエンス全史は、ユダヤ人の歴史家ユヴァル・ノア・ハラリが、人類の進化を約600ページに渡って書いた歴史書だ。一見難解に思えるタイトルであるが日本語訳もとても読みやすく、歴史書をあまり読んだことのない人でも抵抗なく読むことができるだろう。

この書籍は、多くの読書家の著名人も評価コメントを寄せている。
バラク・オバマを始め、ビジネス界からはビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ、日本人では池上彰、堀江貴文等、各界の著名人が手にしている。

この本の面白いところは、著者の独特の解釈だ。
例えば人類にとって大きな転換点となった「農業革命」についても、ポジティブな側面だけで捉えていない。

農業革命が起きる前の狩猟採集時代は、木の実を採取し、動物を狩り、川まで水を汲みに行った。運動によって体も作られているし、多くの種類によってバランスの取れた食生活を送っていた。
しかし、農業革命が以降、人々の仕事は田植え作業のように単調で苦しい肉体労働を強いられるようになった。食糧をコントロールできるため、組織は大きくなり国や国家が出来上がっていくという側面では一見豊かになったように見えるが、一般生活はかえって苦しくなった。家畜によって感染症も増え、貧富の差や政府(管理する側)による搾取も行われるようになった。

これは、今までの常識的な考え方とは捉え方は違うように見えるものの、至って本質的で理に適う整理だということが分かる。

このように、著者独特の観点で、きちんとした根拠を持って多面的かつ本質的に人類の歴史を辿っていくことができる。この考え方は、貨幣や宗教の成り立ちにも触れ、人類の現代、将来にも触れられていく。

人類が勝手に抱いている国や宗教という虚構

国や宗教は、現代の人類にとって絶対的な存在であると信じられている。しかし、これらは人間が管理しやすいために、または多くの人間が生きていきやすいために、勝手に想像した虚構に過ぎない。
これは暗黙知、いわば一種のタブーのように触れられることは無かったが、目をそらす必要はないのだ。
虚構というのは何も悪いことではない。スポーツも虚構である。つまり、観戦者も含むスポーツに関わる多くの人が同じ想像上のルールを共有することで、プレーし、戦い、応援することができる。虚構があるからこそ、行動が統一されている。

しかし、この虚構が虚構のように扱われなくなってくると厄介だ。いわゆる、宗教戦争の火種にもなりうる。
ちょっとした宗教上の解釈の違いでユダヤ教とイスラム教が争っているが、どちらの宗教も人間が勝手に作った虚構でしかない。それでも殺し合いにまでなってしまうのだ。相手の宗教を認めると、同時に自分の宗教を否定することになってしまい、その結果として国家が体裁を保てなくなってしまうことを恐れているからだ。
こう考えると、宗教戦争は全くもって生産的でないし、悲しくなる。しかし、これが現代人類の現実だ。

人類は成長しているのか

僕たち人類は現代に至るまで、成長の軌跡を辿っていると思いがちだが、果たしてそうなのだろうか。少なくとも僕はこの本を読んで、とても考えさせられた。

ある当時では奴隷制度が常識的な価値観だった。黒人は動物のように売り買いされ、家畜のように動労させられた。白人が暮らしていくために必要な労働力であったし、それを買うことは至極普通の行為だった。
これは、現代社会ではほとんどありえない。少なくとも現代の日本人にとっては、全く考えられないことだろう。しかし、昔の人から見れば「なぜ安くて強い労働力を買わないのか」ということになる。
さて、何百年も後の人類が、僕たちの社会を歴史で振り返った時に、「なぜ同じ時間、同じ内容の仕事をしているのに正社員と派遣社員の区別があるのか。派遣社員制度は奴隷と同じだ」と言われているかもしれない。もしかすると、また安い人間を買っているかもしれない。

今でも、人件費の安い海外に工場を構えてモノづくりが行われているが、本質的には奴隷制度と何が違うのだろうか。結局、人間のすることは昔から大差ないのではないかと思えてくる。

これだけテクノロジーが進化した現代でさえ、戦争やテロは無くならず、飢餓に苦しみ、感染症に怯えて生活している人が何億人と存在している。苦しんでいる人の数は、人類の歴史と共に増えているかもしれない。
こういった現実を目の当たりにして、果たして現代人類は何百年、何千年という時を経て、成長し幸せになっていると断言できるだろうか。

唯一私たちに試みられるのは、科学が進もうとしている方向に影響を与えることだ。私たちが自分の欲欲望を操作できるようになる日はちかいかもしれないので、ひょっとすると、私たちが直面している真の疑問は「私たちは何になりたいのか」ではなく、「私たちは何を望みたいのか」かもしれない。この疑問に思わず頭を抱えない人は、おそらくまだ、それについて十分考えていないのだろう。

人間には数々の驚くべきことができるものの、私たちは自分の目的が不確かなままで、相変わらず不満に見える。カヌーからガレー船、蒸気船、スペースシャトルへと進歩してきたが、どこへ向かっているのかは誰にもわからない。
(中略)
自分が何を望んでいるのかもわからない、不満で無責任な神々ほど危険なものがあるだろうか。

これらの引用は、とても哲学的で大きな話だが、極めてシンプルな本質だ。
この書籍を読むと、こういった本質的な問題に度々頭を悩ませることになる。

ビジネスリーダーこそ、歴史から学ぶ

歴史を知るということは、将来の行動を考えるために大きな糧となる。
冒頭にも述べたが、マーク・ザッカーバーグやビル・ゲイツといったビジネスリーダーも、単なる読書家というだけでなく、こうした書籍を大量にインプットすることで自分の行動を考えている。
僕の周りにいる優秀なビジネスリーダーたちも、やはり歴史書をよく読む傾向にある。

書店に行くと、何かの受け売りのような啓発書がたくさん棚に並んでいるが、実のある歴史書を読んでみると啓発書なんかよりもずっと為になるはずだ。
歴史の背景にある当時の人々の思考や行動が、自分自身の思考となっていき、とても濃密な学びを得られるだろう。

そういった意味でも、この「サピエンス全史」はとても良い一冊になると思う。僕も、これから何度も繰り返し読むことになるだろう一冊だ。
ぜひ一読して頂きたい。

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福