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日常の小さな幸せを感じる物語【アイネクライネナハトムジーク(著:伊坂幸太郎)】

アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫)

読書感想文【アイネクライネナハトムジーク(著:伊坂幸太郎)】

僕は伊坂幸太郎という小説家が好きで、ほとんど全部の小説を読んでいる。
先日書店に立ち寄った際、彼の著書である「アイネクライネナハトムジーク」という小説が文庫化されているのを見つけた。

この本は、僕が伊坂作品の文庫版をほとんど読了し次の作品を欲していた頃、ハードカバーで販売されていた小説だ。
最初に手にしたのは、おそらく今から2~3年前だったと思うが、今回文庫化されていたのを見つけたのをきっかけに本棚から当時のハードカバーを引っ張り出して、再び読んだ。

そもそも、「アイネクライネナハトムジーク」とは、モーツアルトが作曲した楽曲のタイトルであり、「アイネ(ある)クライネ(小さな)ナハト(夜の)ムジーク(曲)」という意味だそうだ。(曲の日本語名は「小夜曲」)
伊坂作品は、特殊能力や殺人等のテーマを割とエンターテイメントなタッチで表現されることが多いが、本書は恋愛をテーマにした普通の日常が描かれている。激情的に大きく盛り上がるというよりは、淡々と日常がスケッチされている感覚だ。そのため退屈な感覚を覚えるかもしれないが、秋の夜長にいそいそと読むには丁度良いのではないだろうか。

本書は6つの短編から成っており一見すると短編小説なのだが、ここは伊坂作品らしく全ての物語がそれぞれ「ある点」で結びついている。別の物語に出てくる人物が、実は親子だったり、恋人だったり、友人だったり。さらには、十数年の時間を越えて物語が繋がったりする場面もあり、読んでいてとても軽快だ。

1つめの短編「アイネクライネ」は、伊坂幸太郎と親交のある斉藤和義(シンガーソングライター)から作詞の依頼を受けたことがきっかけだそうで、「詞は書けないけど、小説なら」と言って短編を書くことで誕生した物語だ。(こういった回答の仕方が、いかにも伊坂幸太郎っぽくて好きだ)そして、作詞を依頼した斉藤和義は、伊坂が書いた短編「アイネクライネ」を原案にして、「ベリーベリーストロング~アイネクライネ~」を作曲した。
また、本書を読んだ後で知ったのだが、この小説の最後の短編「ナハトムジーク」は、「アイネクライネナハトムジーク」を出版するために、それまで書かれていた5つの短編をまとめ上げるストーリーを後から書き下ろしたものだそう。最後の短編「ナハトムジーク」で全てのストーリーを一つにまとめ上げる爽快感は、まさに伊坂幸太郎のエンターテイメントが存分に炸裂した作品だ。

今まで伊坂作品を読んだことが無い人にとっては若干薄味に感じるかもしれないが、むしろ伊坂作品を読んだことがある人こそ、いつもの伊坂幸太郎と違う側面を感じて面白いのではないだろうか。

【文庫】

アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫)

アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫)

【ハードカバー】
アイネクライネナハトムジーク

アイネクライネナハトムジーク