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AIによって無くなる仕事、残る仕事

人工知能

人工知能(AI)の話題になると、テクノロジーの話よりも仕事の話になることが多い。

このブログでも過去にいくつかAIに関する記事を投稿しているが、今回はWikipediaの「職業一覧」から、いくつか職業をピックアップしてAIによる代替の可能性について考察していく。

AIにより無くなる(代替される)職業

タクシー・トラック運転手

自動運転の技術はすでに確立されているし、近い将来に実用化するだろう。
実用化されると、一般消費者よりも先に物流で使われることが予想される。となるとタクシーやトラックの運転手は、数ある職業の中でも一番早く代替が起こる分野だろうし、現実的だと思う。

自動運転が実用化すれば、職業だけでなく業界地図もガラッと変わるはずだ。
例えば、Amazonは自社物流を強化し、自動運転による24時間配送をするだろう。人件費もかからず低コストで効率的に運用することができる。こうなると現状ではヤマト運輸等に委託している配送も、委託を廃止することができる。さらには、Amazonの物流部門を分社化して他の企業の配送を受託するようになるかもしれない。ますますヤマト運輸の存在は危機的状況になる。
ヤマト運輸は、値上げ等で対抗するだけでなく、将来をきちんと見据えて戦略を立てないとあっという間に立場が危うくなっていくだろう。

Uberは自社で自動運転タクシーを所有して、乗客とマッチングさせる。AIによって、時間帯や曜日に合わせて常に効率的にタクシーを配置しておくため、タクシーを待つ時間が最も少ないタクシー会社になる。規制の問題さえ解決できれば低料金が実現し、消費者にとって利用しやすくなるので、マイカーを所持せずタクシーの利用率が増加するだろう。

通訳・翻訳家

Google翻訳のカメラ機能を使うと、カメラで写している映像の文字部分だけを指定した言語に変換される。最初にこの機能を使った時は、驚愕だった。
また、スカイプには同時通訳の機能が既に実装されている。
このように、通訳や翻訳については、わざわざ人間を通す必要はなくなり、AIを搭載したマイクやスピーカーを通じて、リアルタイムに異国語同士で会話することが実現していくのは間違いない。
日本語は言語的にかなり難解なので、通訳や翻訳の技術が完全に適用されるのは遅れると思うが、あと数年の内に画期的な実用ガジェット(スマホアプリ含)が世に出てくるはずだ。

一方で、映画や小説等の翻訳については、技術が追いつくのは少し後になるだろう。映画や小説は単に意味が分かれば良いという単純なものではなく、機微な言い回しや表現が求められる。そのため翻訳者によって表現が異なるため、クリエイティブな部分がどうしても残る。(村上春樹の翻訳は、村上作品のような表現になっている)
とはいえ、技術が進歩すれば多彩な表現による翻訳も可能になってくるだろう。基本的な翻訳は、テクノロジーで代替することになるはずだ。

アパレル店の販売員

お客さんにお勧めできる洋服のパターンは知れている。
実際、アパレル店の販売員のおすすめで、心に響いた助言などほとんどないし、販売員の感性やセンスもバラバラだ。はっきり言って、アパレル店の販売員には、ほとんど存在価値はないと言っていい。

今後の試着室では、鏡に色々な服を着た自分が映し出されるだろう。
AIが自動で身長や体型、年齢を判別。好みの服装についての質問に回答するだけで、AIがおすすめする服装に瞬時に着替えることができる。「もっと明るい」「もっとカジュアルに」などと注文していくことで、瞬時に何着も試着していくことが可能だ。
気に入った洋服は、その場で決済。在庫を持ち帰るか、自宅へ郵送することができる。
さらに将来的にはこの技術が家庭用になり、自宅の鏡等で試着し、オンラインで買い物をするようになるだろう。
洋服の実物を見てみないと、肌触りや色合い等が分からないこともあるのでリアル店舗が無くなることはないと思うが、アパレル店舗に必要な人材は陳列や掃除位のものだろう。(レジや在庫管理もテクノロジーで代替される)

しかし、センスがずば抜けて良い人は、ファッションデザイナーの道は残されている。有名ブランドのショーや、ファッション雑誌のモデルのコーディネイトのようなクリエイティブな分野は代替が難しい(もしくは遅い)領域だ。

医師

医師の仕事の全てが無くなる訳ではないが、医師の仕事の多くは、目の前の患者の症状から、過去の症例と一番近いものを探す作業である。そして、患者のアレルギーや体質等を考慮して、薬を処方する。つまり、過去の症例や、薬の処方候補という膨大なデータ(ビッグデータ)を検索し、一番近いものを見つける仕事なのだ。
さらにAIは画像認識にも長けている。そのためレントゲン検査についても人間の目に依存するより、AIが過去のレントゲン画像数百万枚と一気に照合する方が小さな症例であっても見逃すことはない。今後は、診療記録のデータベースを世界中で共有する時代がくるだろう。

とはいえ代替が難しい領域もある。
目の前の患者の観察や症状の把握は、まだまだ人間が行う必要があるだろう。
さらに手術等のオペレーションも全てテクノロジーに任せるというのは、なかなか難しそうだ。
そして、人間と人間によるコミュニケーションはテクノロジーでは代替できない。特に、病気に係っていると精神的にも弱ってしまいがちであり、話をきちんと聞いてくれる良い医師というのはいつの時代でも求められるだろう。
医師は、AIによって代替されるというよりも、共存していくというイメージに近いかもしれない。

弁護士、裁判官

目の前の行為が、どの法律に抵触しているのか。または過去の類似判例と比較してどうか、について調べようとした時、AIの方が断然に性格で早く結果を出すことができる。
六法は判例集を片手に、とにかく読み耽るという時代はもう終わった。
弁護士や裁判官の役割は、情状酌量の余地を探すための状況判断や心理的な状況をいかに加味するか(またはしないか)を判断する分野にフォーカスしていくだろう。

弁護士や裁判官も、上述の医師のように、AIによって代替されるというよりも、共存していくというイメージに近い。

スポーツの監督

既にAIを活用しているチームも多いだろう。
過去の試合データや相手の戦術、試合会場から天候まで、あらゆる大量のデータを分析して最良の戦術を提案してくれる。
監督はAIの戦術をいかに運用するか、戦況が変わった時(選手の突然の怪我等)のイレギュラーにいかに対応するか、モチベーションをいかに高い次元で保つか等にかかってくるだろう。

AIにより無くなる(代替される)可能性の低い職業

落語家、芸人

同じ話であっても、話し方一つ、声のトーンやスピード、間の取り方一つで人を笑わせる。この技術はAIで代替できる領域ではない。
「空気を読む」というセンスも必要であり、この世界で成功している人たちは極めてレベルの高い世界で挑戦している。
また、台本を書くという作業も実にクリエイティブ要素が高く、AIで面白い台本を書くことはなかなか難しいだろう。

ミュージシャン、歌手

生演奏、生の歌声、ライブ感。こういった臨場感を演出できるのも、人間ならでは。
作曲等の分野はAIによって代替される可能性はあるが、「表現」に直接関わる部分はやはり人間しか担うことはできない。
(ボーカロイドやロボット演奏等が増えてくるとは思うが、「感動させる」側面で人間に勝つことは難しく、全体で見ればニッチ領域を出ることはないだろう)

小説家、漫画化、映画監督

創作する仕事は人工知能では代替することは難しい。
発想力や表現、伏線の張り方や回収等は、多用な人間だからこそ面白い。実験的にAIが小説や映画を創ることはあるかもしれないが、職業そのものを脅かすほど品質の高い(つまり感動的な)作品を創作することは考えにくい。

まとめ

AIは怖い、という論調の記事を良く見る。
しかし技術の進化を歓迎すべきだと僕は思っている。

かつて、活版技術が誕生した時、今まで手で印刷作業をしていた人たちが大量に仕事を失った。この人たちは活版印刷機械を壊して回ったそうだ。しかし、活版印刷機械を製造する仕事が新たに創造された訳だし、多くの情報を編集する必要も出てきた。つまり、仕事が無くなったのではなく、働き方や社会の構造が変わっただけに過ぎない。
確かに、自分の目の前のことだけを考えれば新しいテクノロジーによって仕事や生活が脅かされるのかもしれない。しかし、長い目で見れば、僕たちの生活や文化レベルを間違いなく向上させてくれるものなのだ。
要するに、いかに新しいテクノロジーを理解し、受け入れ、そして活用していくかということだ。これができなければ、社会から置いていかれてしまうだけだ。

AIがもっと進化することにより、新しく生まれるであろう職業もたくさんあるはずだ。
特にAIを活用したエンジニアやサービス企画、運用分野はこれからどんどん拡大するだろう。先日の記事でも書いたが、AIを用いたサッカー戦況予測サービスが既にサービスとしてローンチされている。サッカー戦況予測サービスを運営する仕事は、まさにAIによって新しく創造された職業である。
さらには、電脳戦と呼ばれるAIと棋士との勝負を企画、運営する仕事もAIによって新しく創造された職業だ。AIが無ければ、企画自体存在しない。

このように、AIという一つのテクノロジーが、僕たちの社会に浸透してくることは積極的に歓迎すべきことだ。
AIが当たり前となった世界を創造しながら、今を行動しよう。


WIRED VOL.20 (GQ JAPAN 2016年1月号増刊)/特集 A.I.(人工知能)

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